大江戸ロミオ&ジュリエット

すっかり食が細くなってしまった志鶴だが、大蒲焼はもちろん、ともに出された(うなぎ)を玉子で巻いた「()巻き」や鰻の肝を吸い物にした「肝吸い」もすべて美味(おい)しそうに平らげた。

箸を静かに置いた志鶴は、多聞に向き合った。

「……旦那さま、短い間でござったが、今までありがたく存じてござりまする。
松波の御家(おいえ)に対しますれば、かような(こら)え性のない至らぬ嫁でござって、誠に申し訳ありませぬ」

深々と、平伏した。

姑の富士の仕打ちに関しては、なにゆえかということもわかったし、とうにすっかり水に流していた。

梅ノ香とのことでは、今までに(いだ)いたことのない苦い思いを味わい、それは今でも沸々としている。

さりとて……

多聞は最後に、かような場を与えてくれた。

今まで多聞には給仕はすれども、一度たりとて共に食すことなどなかった。
武家の夫婦(めおと)はそれがあたりまえだからだ。
また、食す品数も夫の方が多い。
武家の夫婦(めおと)はそれがあたりまえだからだ。

なのに……

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