大江戸ロミオ&ジュリエット

母の志代の声であった。

その声で、志鶴は「北町」に出戻ったことが、夢ではなかったと思い知らされる。

志鶴は悟られぬように、落胆の息を吐いた。

「病ではない」

玄丞は呆れた顔で志代をじろりと見て、きっぱり告げた。

「……月の(さわ)りは、如何(いか)ほど遅れてござるか」

玄丞は志鶴に向き直って訊いた。

志鶴は目を見開いた。
確かに、月の障りは遅れていた。


……まさか、あの日の。

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