大江戸ロミオ&ジュリエット

「淡路屋の後妻(のちぞえ)(たぶら)かして口を割らせたのは、おめぇだろ」

多聞は喉の奥で、くっ、と笑った。

北町奉行所が、廻船問屋「淡路屋」の主人の、押し込み強盗の引き込みをしていた歳の離れた後妻を自白()として尻尾を掴み、仲間の者たちを一網打尽にした捕物のことを云っていた。

「……南町(うち)にも、おめぇのような『隠密』がいりゃぁな」

多聞は口の端を歪めた。

……志鶴と尚之介の「密通」のことではなかったようだ。

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