大江戸ロミオ&ジュリエット

振袖新造になれなかった梅ノ香は「留袖新造」として、客を選り好みできぬ一階の「廻し部屋」から、文字通り我が身ひとつで二階に上がり、一部屋だけ与えられる「部屋持ち」を経て、座敷と寝間である次の間とを与えられる「座敷持ち」まで成り上がった。

「女郎」から「遊女」になったのである。

だが、歌舞音曲もできず学才もないおのれでは、最上位の「呼出(花魁)」には到底なれぬことは承知していたが、せめてその下の「昼三」にはなりたかった。
それだけが心残りではあるが、致し方ない。

されども、男に我が身を売らねばならぬかような辛抱も、明くる年の十年の年季奉公が明けるまでのことだ。

梅ノ香はたとえ(めかけ)という日陰の身であっても、商家の年嵩(としかさ)の主人の後妻(のちぞえ)に入るより、やはりかつて身も心も許した多聞がよかった。

多聞とまた巡り会えたことに、これからのおのれの人生をかけていた。

……そして、いつかは、多聞さまとのお子がほしい。

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