大江戸ロミオ&ジュリエット
「……さすれば、今宵は如何で此処に来なんしたのかえ」
梅ノ香は白粉で美しく整えた顔を、少し強張らせた。知らず識らず、険のある声になる。
そのとき。
「……お邪魔しなんし」
襖がすらりと開いて、齢十二、三ばかりのおなごが入ってきた。
「ご酒にてありんす」
おなごはにっこりと微笑んだ。
「なよ竹のかぐや姫」とは、かようなことを云うのか、と多聞は思った。
そのくらい、そのおなごはまるで後光が射すかのごとくきらきらと輝いて見えた。
だが、かようなことはおくびにも出さず、
「酒席は無用だと云うたはずだが」
多聞はおなごをじろり、と睨んだ。
「まぁ、お武家の哥さま、そないな無粋なことは云わでおくんなんし」
おなごは多聞の鋭く冷たい視線をものともせず、
ふふふ…と微笑みながら手にした銚子を傾けた。
多聞もつられて盃を差し向けていた。