大江戸ロミオ&ジュリエット

浅葱鼠(あさぎねず)の着流しの、上には鮫小紋(さめこもん)肩衣(かたぎぬ)を羽織り、下には(くるぶし)までの丈の縞の平袴(ひらばかま)
腰にはもちろん、大小の刀の二本差し。
そして、目の覚めるような白足袋(たび)雪駄(せった)履き。

御役目の際の勤め着である継裃(つぎかみしも)だ。

()れぞ、天晴(あっぱ)れ大江戸の与力」。
(ちまた)のおなごたちに飛ぶように売れている、まさしく「浮世絵与力」の(なり)そのものだ。

多聞は(あぶみ)に片足をかけ、ひらり、と愛馬に跨った。弥吉がとっていた手綱から手を離して、すーっと後ろへ下がる。

影丸(かげまる)……いざ、参るぞ」

愛馬に一声かけて、多聞はぐっと手前に手綱を引いた。

影丸は雄叫びのように(いなな)くと、鶴首をしならせて左右の前脚を漆黒の夜空に向けて上げ、主人(あるじ)に応える。その両脚が地面に下りたと同時に、多聞は鐙で影丸の横腹を蹴った。

影丸はしなやかな尾を大きく一振りして、夜道を一気に駆け出した。

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