大江戸ロミオ&ジュリエット

「わしもそなたと同じ心持ちで育ってござる。
代々与力である上條の家に生まれながら、次男である我が身の上を、どれほど恨んだことか。
幼少のみぎりより文武ともに精進を重ねてきて参ったのは、ひとえに志鶴殿、すべてそなたを我が妻にするためにてござる。
そなたもわしを慕っていたと云うのであらば、生まれてくる子をたった一人で育てるなどと云わず……どうかわしを頼ってくれぬか」

縁側の向こうに立つ、島村 尚之介は云った。

「……その子の父に、ならせてはもらえぬか」

その声には、切実な思いが宿っていた。

志鶴が産んだ子であらば、たとえ血が通わぬとも「我が子」として慈しんで育てていける、という決意の(あらわ)れが滲み出ていた。

< 361 / 389 >

この作品をシェア

pagetop