その瞳は、嘘をつけない。
「心配していたよ、お前のこと。」
「心配って・・・なんで?自分が振ったのに?」

「その解釈も乱暴すぎないか?
 あいつは、距離を置きたいって言ったんだろ?
 お前の気持ちを図りたかっただけだ。」
 もしお前が一言、嫌だと言っていたら、違う結果になっていただろうな。
「そんなはずない。
 一度興味を失った人が、`私なんか`のとろこに戻ってくるはずないから!!」

つい声を荒げて、立ち上がってしまった私に、
秀くんが立ち上がって近寄って来た。

何も言わず、右手を上げるその動きを見て
殴られる、と
衝撃に耐えるため、目を瞑って首に力を込める。

その瞬間に備えようとしても衝撃はやってこなくて、
その代わりに、腕と背中と胸に力を感じて、少し苦しくなる。

抱きしめられている。

そう気づいたけど、体に入った力は、なかなか抜けない。


「落ち着け。殴ったりしない。」
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