その瞳は、嘘をつけない。
落ち着いてると思う。

ただ、腕を振り上げられたその仕草に対して
体が、勝手に反応しただけ。

「大丈夫だ。大丈夫。」

優しく髪を撫でてくれて、
少し力が抜けた私の頭を
そっと胸元に引き寄せてくれた。

 「俺が今、お前とこうしてられるのも、あいつと別れてくれたおかげだな。」

秀くんが使ってる、柔軟剤の香りがする。
私も一度、同じのを買ったことがあるんだけど、
同じように使ってるつもりなのに、この香りは再現できなくて、元の柔軟剤に戻した。


ずっとこうしていたいけれど。

お互いに立ったまま、抱き合っている。
身長差がかなりある私たちにとって
この体勢は、秀くんの負担になっているはず
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