その瞳は、嘘をつけない。
遠距離だから浮気してもいいなんて、もちろん思わないけれど。

恋愛には、決まったルールがない。
勝ち負けの問題でもないし、一本道でもない。

本人たち同士にしかわからない要素もたくさん絡み合っていて
それはもしかしたら、本人たちにもわかっていないのかもしれない。
周りがとやかく言うことでもない。

「言われたんだ。俺みたいな冷たい男に恋愛は無理だと。」

「冷たいって・・・秀くんは冷たくなんてないよ？」
「お褒めにあずかり光栄だな。
だが、あの時はそうじゃなかった。
仕事を覚えるのにも必死で大して連絡もしていなかったから。」

「そんなの、仕方がないのに。」

「それに俺も、付き合いが長かった割にあいつのことをよく理解していなかったようだ。
あんなに寂しがるなんて思いもしなくてな。」

「おまけに、振られてからしばらくは仕事にも身が入らなくなって、大きなミスもした。
以来、恋愛沙汰には関わらないようにしてた。」

「でも秀くん、もてたでしょ。
誘いも多かったんじゃない？」

振り返って秀くんの顔を覗き込む。
どんな顔をしているのか、ちょっと気になる。
< 180 / 218 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop