その瞳は、嘘をつけない。
「そうよね、連絡先を聞くなんて実加ちゃんには難しいよね。
だからこれ、渡すだけなら大丈夫でしょ!」

大丈夫でしょと言われても。
ダメだ恥ずかしすぎる。

耕平以外に恋愛経験がないものだから、こういう駆け引きのような行為には縁遠かった。
恋愛小説なんかでは、こんなシチュエーションも確かによくあるけど、
読んできゅんきゅんするのと、自分がやるのは全く別物。
恥ずかしすぎる。
恥ずかしすぎる。
恥ずかしい!!!

んだけど、なぜか体は勝手に動いていて。
彼の席へ近づいた私は、ふと顔を上げた
彼と目が合ってしまい。

もう後には引けなくなっていた。

「ああの、これ!良かったら読んでくださいっ。」

テーブルの上にメモ用紙を置き、彼の反応を確かめることすらもできずに踵を返し、カウンターへ逃げ込む。
読んでくださいって・・・。
これじゃあ、ラブレター渡す中学生みたい・・・。
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