その瞳は、嘘をつけない。
「映見ちゃん、お先に失礼しまー…。」
映見ちゃんに声を掛けようと、お店へ通じる扉を開けた途端、目に飛び込んできた光景に言葉を失ってしまう。

カウンターの内側には映見ちゃん、そしてその向こうには、一之瀬さん。
明らかに、談笑してたよね??

「あ、実加ちゃんおつかれ!
一之瀬さんが待っててくれるっていうから、早く着替えて来なよ!」
……………

きっと今の私の表情は、目が点、っていうののすごく良い見本になっていると思う。

「一之瀬さん、このビルの東側のポストの辺りに、従業員用の通用口があるので、そこで待っててあげてください。」
映見ちゃんは一之瀬さんに振り返って説明している。
一之瀬さんの視線は、映見ちゃんを通り越して私の元へ。
「それじゃ、取り敢えずそこで待ってるから。」
そう言い残し、お店を後にした。

なに?どういうこと!?
「ほら早く行かないと。待たせちゃ悪いでしょ。」
映見ちゃんの一声で正気に戻る。

「ちょっとどうなってるの?ていうか映見ちゃん、あの人とあんなに仲良さそうに話してたんだから、連絡先は自分で聞いたらいいじゃない。」
「はいはーい。お疲れさまー。
いらっしゃいませー。」

映見ちゃんは私の背中を押すと接客を始めてしまった。
私は一之瀬さんが待つ通用口に向かうしかない。
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