その瞳は、嘘をつけない。
一番近くにあった、チェーンの大衆居酒屋に入る。
そこそこお客さんも多く騒がしのも気にならないくらい緊張している私がいる。
と、おしぼりを持ってきてくれた店員さんにさくっとビールを注文してくれる。
私は、メニューをじっくり見て、フードと一緒にビールの注文をするタイプなので、この素早さは新鮮だった。
すぐに運ばれてきてきたビールで、取り敢えず乾杯。
お通しの胡瓜の漬物が美味しくてビールとの相性抜群で、ついほっとしてしまう。

ついと顔を上げると、一之瀬さんと目が合って。
つい視線を泳がせる。
向かいあって座ってるんだから、視線が合うのも当然だし。
というか、やっぱり会話をするなら相手の目を見ないと失礼だよね、とか、
でもその相手の目を見るってのも苦手なんだよね・・・とか。
また頭の中でひとり考え込んでしまう。

無言なのも居心地悪いし、何か話さなきゃ。
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