男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ちゃんと審査をしてお城に勤めている侍女でも……?」

「ええ。陛下に取り入ろうとする女をこれまでにも数えきれないくらい見てきています。陛下の私室に一歩たりとも入れないのが、これまでの習わしです」
 

陛下に取り入ろうとした方法を聞いてみたい気もしたが、アベルの顔は険しくなっている。

そんな女性ばかりではないと反論しそうになったが、正体がバレてしまったら大変なことになる。ミシェルは先を促した。


「そして昼食ですね?」

「そうです。陛下は休息をとらずに午後の執務をされますので、その間に明日の着替えの支度や、湯殿の用意をします」


それからアベルは夕食後、陛下が寝るまで側に控えることをミシェルに教えた。


「私たちの食事は侍女が運んできますので、侍従部屋でいただきます」
 

そういえば、突然のことで朝食を抜いていたことを思い出す。食事のことを考えるとお腹が鳴りそうになって、急いで手をやって押さえる。

そんなミシェルにアベルの固かった表情が和らぐ。


「さてはお腹が空いているんだな?」

「す、すみません。朝食を食べる前に祖父に急き立てられて……」

「そうかそうか。ここではお腹いっぱい食べられるから、そのひょろひょろの身体がすぐにがっしりするぞ。フランツは細すぎる」


アベルは楽しそうにミシェルの肩をポンポンと叩いた。


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