男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
城の食事はアベルの言った通り、肉の煮込み料理や焼魚、新鮮な野菜が盛られた皿を侍女が運んできた。

それだけでもミシェルにとっては多すぎるが、さらに焼きたてのパンと焼き菓子まで付いている。


「すごい豪華な料理ですね」

「そうだろう? 私たち、この城で働く者は幸せだよ。さあ、早く食べなさい。陛下が戻って来られるかもしれない」


アベルはミシェルに早く食べるよう急かした。
 


食事も終わりかけた時、部屋に鈴の音が小さく響いた。

まず階段で見張っている衛兵が、国王が通ると知らせる。その後、国王の私室の前に立つ衛兵が侍従部屋へ鈴の音で連絡をする二段階の仕組みになっている。


「陛下が戻ってこられた」
 

アベルは即座に立ち上がり、ミシェルも飛び跳ねるようにして椅子から離れる。
 
もうすぐ国王と会うと思うと、ミシェルの心臓はドクンドクンと痛いくらい暴れ出してきた。

男装して国王を騙しているのだ。それが平気に思うのなら、悪党になれるだろう。


「フランツ、大丈夫か? 顔色が青いぞ?」

「だ、大丈夫ですが……心臓が口から出そうです」


呼吸を整えるミシェルは喉元に手をやる。


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