男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「無理もない。陛下にご挨拶をしたら、私の後ろに下がっていなさい」

「はい……」


国王の前で声がちゃんと出せるのか、心配で仕方がないがここまで来てしまっているのだ。


(やるしかないのよ)


ミシェルは国王の私室へ向かうアベルの後に付いて行く。


「陛下」
 

クロードは肩に房飾りがついた上着を脱ぎながら部屋に入って来た。アベルがすかさず手を伸ばしそれを受け取る。
 
ミシェルはアベルの仕事ぶりよりも、少し離れたところに立つ国王を食い入るように見つめてしまっていた。
 
ひょろっと背の高いアベルよりもクロードはさらに高く、そして上着を脱いだシャツの下は細身ながらも、腕を動かすたびに盛り上がる筋肉が想像できる。

国王はミシェルには今まで見たことがない美麗な顔だった。

クロードの髪は漆黒で襟にかかるくらいだ。

ふとクロードの瞳がアベルの後ろに立つ、ミシェルを捉えた。


「その者は?」

泣く子も黙るようなビシッとした口調に、ミシェルは身を縮こませそうになる。


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