男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「違う。まっすぐにしろ」


元々、額は曲がってなどいない。

クロードは新入りの侍従見習いを観察したかったのだ。少し離れたところに立つ侍従見習いは一生懸命直そうとしている。


(腕を上げているのもそろそろ疲れただろう)


「もういい。下がれ」
 

実際、額が曲がっていようが、なかろうが、クロードにとってはどうでもいい事だった。
 
クロードの厳しい声にミシェルは飛ぶようにアベルの背後へ戻る。そして国王の視線から逃れられ、ホッと安堵していた。


(うーっ、腕が疲れた……)


しんどかった素振りなどみじんも出せないミシェルだった。


 
 
その夜、食事が出来たのは日付が変わる頃だった。

クロードは私室で夕食をとり、その後隣にある談話室の机で書き物をしていた。その部屋の隅でアベルとミシェルは静かに立っていた。

ミシェルが仕事に慣れれば、交代で見守ることになると後でアベルから教えられた。


(思ったよりきつい仕事だわ……)


脚が棒になったように痛くて、揉みたいところを我慢する。
 
ミシェルとアベルは侍従部屋で食事をしていた。夕食も昼食と料理はあまり変わらない。


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