男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下の起床は毎日六時です」


ということはミシェルの起きる時間はもっと早くだ。今もいつもより就寝が遅い時間。ちゃんと目が覚めるか心配だ。


「不安そうですね」
 

アベルはミシェルの気持ちを察した。


「……はい」

「フランツが慣れるまで、私が起こしてあげましょう」
 

ミシェルの疲れていた顔が明るくなる。


「本当ですか! ありがとうございます!」
 

優しいアベルに無邪気に喜ぶミシェルだ。結婚をしていないアベルには子供がいない。自分に子供がいたらこんな感じなのかとふと思ったアベルだ。

 

ロドルフの部屋に戻ったミシェルは一目散に侍従服を脱いで、胸に巻いたリボンを一気に解いていく。

胸が押しつぶされていたせいで違和感がずっとあり、ちょっとつらい。この仕事が終わるのが待ち遠しく感じられる。

それでも、王城で働いてみたかったミシェルは大変ながらも初日の仕事を楽しんでいた。
 
下働きでは近くでは見ることが出来ない、見目麗しい国王のすぐ近くで働ける。そんなことは一生ないと思っていた。

胸のリボンを解いたものの、朝アベルに起こされた時に女の子だとバレてしまっては大変だ。

ミシェルは束の間の解放感を得てから、寝る前に再びリボンを胸に巻いてベッドに横になった。


「んー気持ちいい……」


城へ来てから慌ただしく過ぎ去った一日を振りかえることなく、ミシェルは心地よい眠りに落ちた。


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