男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「いつまでいられるの?」

「今クロードさまはとても忙しくて……落ち着いたら迎えに来てくれる予定なの」
 

本当に迎えに来てくれるのかわからないが、そう言っておけば詮索されないで済むだろう。
 
そう思ったミシェルだが母親の優しい微笑みに涙が出てきた。


「お母さん……嘘なの……クロードさまは迎えに来てくれない……」


頬に伝わる涙を何度拭いても止まらない。


「まあ……」
 

マリアンヌは泣きじゃくる娘を抱きしめたまま言葉にならず、背中を優しく撫でることしか出来なかった。


その夜、ミシェルの好きな料理がテーブルに並んだ。

焼いたばかりの魚はフランツがミシェルに食べさせたくて釣ってきたものだ。少しこげているが美味しそうに見える。
 
食事中、ミシェルは家族に心配かけないように明るく振る舞い、真心こめて作られた料理を口にした。
 


夕食が終わり、部屋にひとりになると、クロードを想う。


「クロードさまは私を愛していると言ってくれたのに……」
 
泣きそうになってしまったミシェルは窓を開けて夜空を見上げた。美しい光を放つ月はあと数日で満月になる。


「満月になるまでに……迎えに……来てほしい」
 
月に向かって祈るミシェルの手元にはクロードの婚礼衣装があった。ランプの明かりをたよりに刺繍をしていると、気持ちが落ち着くミシェルだった。



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