男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「陛下、この者は……?」


クロードの側近、ヴァ―ノンはミシェルを鋭い目つきで見て片方の眉を上げる。


「ロドルフの孫だ。昨日から侍従見習いになった。フランツ、第一騎士団の団長のヴァ―ノン・ブノアだ」
 

年は三十歳。騎士団は第四まであり、第一騎士団は王城内の警備を任されるエリートの集まりだ。この国の健康な男ならば誰もが憧れる職業である。
 
ミシェルがヴァ―ノンに頭を下げると、彼は小さく頷いた。
 

王城内の庭園に東屋がある。
 
周囲の木々に映える真っ白な八角形の東屋は広さも十分で、生前王妃が貴族の婦人たちを招き、茶会や食事の場所であった。
 
そこに国王とイヴォンヌ嬢の昼食が用意されていた。そばには王城料理人自らが使用人たちに指示をして不手際がないか確認をしている。

クロードが姿を見せると、一同が深くお辞儀をして静かに離れていく。
 
ミシェルは歩くのが早い国王と騎士団の団長に後れを取らないように歩くのが精いっぱいで、無我夢中で東屋までやって来た。

そこで目にしたのは美しい東屋だ。太陽が当たり眩しく、貴婦人のような凛とした佇まいの東屋だった。

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