男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「どこへ行きたい? ぶらぶらといっても行きたいところはあるだろう?」

「えっと……リボンのお店とか、髪飾りのお店とか……美味しいお菓子――」


指を折りながら告げるミシェルに、クロードは楽しそうに笑いながら制する。


「もういい。行きたいところはたくさんあるようだ。その分だと夜までかかるかもしれない。時間短縮のためにすぐに歩こう」  

「……すみません。面白くないと思いますから、ここで別れても……」
 

望んでいる場所は男性が行ってもつまらないところだと思い、ミシェルはそう口にした。
 
クロードが去っていくかもしれないと思うと少し寂しさはある。王城ではずっと自分らしさを出せずに我慢していた。
 
本来おしゃべりが好きなミシェルに戻って、色々な話をしたりして楽しみたかった。


「なにを言っているんだ。面白そうじゃないか。なかなかそういうところへは行けないからな」
 

クロードはそういった店へ行くことは気にしていないようだ。


「ありがとうございます。クロードさま、どこか行きたいお店はありますか?」

「いや、特にない。今日は久しぶりの休日なんだ。気晴らしがしたいと思っていたから、ミシェルに会えてちょうどよかった」
 

ふたりは両脇に店が並ぶ石畳を歩いている。
 
立ち襟の深緑の長い上着に細身のズボン、中に着ている白いシャツの胸元はヒラヒラのフリルが何重にもなっている。
 
クロードは歩いていても人々の目を引くようだ。
 
身なりのいいドレス姿の娘や、大きなオシャレな帽子を頭にのせた貴婦人たちがチラチラと見ている。


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