男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「口がお上手なんですね。言い慣れているみたいです。私は真に受けませんから」

「そんなことはない。実際初めて口にした」
 

クロードはフッと微笑む。


「えっ?」
 
また真に受けそうになったミシェルだが首を左右に振る。


(ダメダメ、絶対にいつも言っている)
 

首を横に振るミシェルが面白いのか、クロードは声を出して笑った。


「ここに入るんだろう?」

「あ、はいっ!」
 

クロードは紳士的に扉を開けて、ミシェルを先に入室させた。

ミシェルが持つ紙の袋の中に、たくさんのお菓子が入っていた。甘い匂いの焼き菓子や、口の中で溶けていく飴玉、高価なチョコレートも。

 
これらはすべてクロードが買ってくれたものだ。
 
特にチョコレートは高価で、滅多に口に出来ない。祖父のロドルフが時々お土産に持ってきてくれるくらいだ。


「こんなにいいんですか……?」
 

ミシェルは袋の中に視線を落として、やっぱり多すぎだとクロードに尋ねる。


「もちろん。菓子を選ぶお前は小さな子供のようで楽しかった」

「小さな子供ではないです。私は十八歳ですっ」
 

クロードにからかわれて、ミシェルの頬が赤く染まった。





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