男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「次は……ああ、あそこがいい」

困惑しているミシェルにクロードは別の店を指さした。ちょうど引きずりそうなほどのドレスを着た貴族の女性ふたりが出てきた。

宝石などが付いた髪飾りが売っている店だ。


「あ、あんな高価なお店は入れません。別のお店へ行きましょう」
 

綺麗なものを見るのは好きだが、宝石が付いた髪飾りなど身分不相応で触れたこともない。


「あの店が高価過ぎるのか?」

「はい。私は裕福な貴族じゃなくて、町の外れに住む村人ですから。必要もないですし高くて買えません。ですから私はクロードと一緒に歩ける身分ではないのです」


クロードの店主に対する言葉遣いや態度は、やはり命令に慣れた者だと痛感したミシェルだ。


「身分など関係ない。ではお前の行きたい店へ行こう」
 

ミシェルの言葉を軽く否定したクロードは歩き出す。だが、ミシェルはその場に立ったまま動かない。
 
来ないことに気づいたクロードは振り返る。


「どうした?」

「あ、いいえ。今行きます!」
 

ミシェルは物思いから我に返り、クロードに微笑み彼の元へ向かう。


(このお方は私が平民だからって気にしていない)
 

ミシェルの心が温かくなった。マーサの店で出会った時からそうだった。マーサへの対応も友人のようだった。


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