男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
それからミシェルは以前入ったことのある髪飾りの店を見つけた。

ミシェルが中へ入ると、クロードも付いてくる。
 
店に置いてあるのは、主にリボン細工の髪飾りだ。花や鳥、蝶などの形になっている。


「可愛いっ!」
 

ミシェルは花の形の髪飾りを手にしてみる。太めのリボンにつけられた赤い花は頭の側面に来るように髪に乗せて後ろで結ぶものだ。
 
クロードは初めて入ったのだろう。ミシェルから離れて並ぶ商品を見ている。


(どれにしようかな……)
 

ミシェルは色々悩んだが、最初に手にした花の髪飾りに決めた。
 
店主に買い求め、ミシェルは満足して店を出た。


「髪につけないのか?」

「あ、はい。今はいいです」
 

今ミシェルはかつらだ。外れることはないと思うが、鏡を見なければきちんと髪飾りを付けることが出来ない。


「そうか。では次へ行こう」
 

ふたりは再び歩き、お腹が空いたというクロードにパンを買って小川の側で食べたいとミシェルは提案した。
 
町中を流れる小川は、少し歩けば憩いの場として人々が利用しており、川原から流れる澄んだ水の近くに行ける。
 
今日はそこには誰もいなかった。
 


< 66 / 272 >

この作品をシェア

pagetop