男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
クロードとミシェルは大きな石にそれぞれ腰を下ろし食べ始めた。
 
細長いパンは噛むとほんのり甘い。


「クロード、こんなところで食べるのは初めてですよね? 大丈夫ですか?」
 

貴族の子息はこういうところで食事などしないだろう。しかもとても簡素な昼食だ。


「初めてだが、楽しいぞ」
 

クロードの表情が柔らかく、心から楽しんでいるように見える。


「よかった……」
 

ミシェルはホッと安堵した。
 
お店に入って食事をしようと言ったクロードにミシェルが提案したのだ。お店で一緒に食べると、客から注目を浴びてしまうと懸念して。

クロードは三つもパンをペロリと平らげた。
 
日差しが温かい正午、お腹がいっぱいになって眠たくなってくる。ミシェルは瞼が落ちてくるのを我慢していた。
 
しかし、クロードは驚くことに服が草で汚れるのもかまわずにゴロンと横になった。

それから瞼が閉じられる。


(えっ? 寝ちゃうの……)
 

ミシェルは眠気を我慢しているというのに、クロードは眠ってしまったのか。顔を近づけて本当に眠っているのか確かめたい。


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