男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ミシェルは座っていた石から降りて、身体をクロードのほうへ傾けて寝息を聞こうとした。

 
その時――。
 
クロードがミシェルのほうへ向き、驚いた彼女の身体が大きく跳ねた。近づいてしまい気まずいミシェルだ。
 
しかし、クロードは彼女の手首を掴んだ。


「ミシェルも寝る?」

「ね、寝るわけないじゃないですかっ」
 

ミシェルは手首を掴まれたクロードの手を意識しながら、明るく否定する。

「そうだな。他の店にも行くんだからな。のんびりして久しぶりに眠くなった」
 

クロードはミシェルの掴んでいた手を離し、すっくと立ちあがった。

まだ座っているミシェルは後れを取ってしまい、慌てて立ち上がる。勢いよく立ち上がったせいでミシェルの身体がふらついてしまった。


「きゃっ!」 
 

クロードの力強い腕がミシェルの腰をグイッと支える。
 
身体が密着してクロードの香りがミシェルの鼻をくすぐった。


(えっ……? この香りは……)
 

ミシェルは大きく心臓を跳ねさせ、クロードの腕から離れようとした。しかし、クロードの腕は解かれず、顔を近づけて黒い瞳でミシェルをじっと見る。



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