男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「ごめんなさいっ! 家でやらなくてはならないことを思い出したんです。私、帰らなきゃ」


そんなこと突然言い出したミシェルにクロードは顔を顰める。


「今すぐ、帰らなくてはならないのか?」
 

不思議なことに、ミシェルといると毎日の重責を忘れられ、クロードは楽しかった。まだ別れたくないとさえ思っている。


「はい。今日はありがとうございました。お菓子もこんなにたくさん……」
 

ミシェルは深く頭を下げて歩き出した。


「ミシェル! 五日後に祭りがある。正午にここで待ち合わせないか!?」
 

去っていくミシェルの後姿にクロードは考えもしなかったことを口にしていた。振り返ったミシェルは驚いた顔をしていた。


「お祭り……」
 

もうミシェルとして会ってはいけない。そう思っていたのに、ミシェルはコクッと頷いていた。
 
それは心から伯爵の子息のクロードとして会いたいと思ったのだ。国王陛下のクロードではなく。


「では待っているからな」

「はい。五日後に」
 

ミシェルは笑顔をクロードに向けて走った。



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