男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
その夜、王城のロドルフの部屋でミシェルはクロードのことを考えていた。

目の前のテーブルの上にはクロードが買ってくれたお菓子が並んでいる。


「どうして陛下が身分を偽って出歩いているの……?」
 

ミシェルはお菓子の誘惑に勝てず、夜も更けているのだが、焼き菓子の包みを開けて口にする。


「あの香りは絶対に陛下だわ」


(あの時、陛下はどこかで会ったことがないか?と聞いた。次の約束をしてしまったけれど、行かないほうが身のために違いない)
 

そう考えて、ミシェルの口から深いため息が漏れる。
 
ちょうどクロードが指定した五日後は偶然にもミシェルの休日。会いに行けない事はない。


「う~ん……行きたいっ」


しかし、バレたくなければ行かないほうがいいに決まっている。
 
町で会った陛下は優しいし、会話も楽しく、ミシェルは惹かれた。

クロードを騙しているし、身分違いにもほどがあるが、今だけは楽しみたい気持ちが大きい。
 
もう一度、小さなため息を吐いてテーブルに広げたお菓子を袋に戻し、棚にしまった。

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