男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
翌日、いつもと変わらない仕事が始まる。


「フランツ、陛下にお茶を持って行ってくれ」
 

前回の失敗からアベルがやってくれていたので、まさか頼まれると思わずミシェルは驚いた。


「フランツ?」

「あ、はい! わかりました!」
 

突然の役目にミシェルは急激にやって来た緊張を気にしないようにしてカップののったトレーをアベルから受け取る。
 
そろりそろりとこぼさないように国王が座っているソファへ近づく。
 
静かにカップを置くことが出来て、ミシェルは安堵した。小さな満足のため息が聞こえたのか、国王がふいにミシェルへ視線を向けた。
 
目と目が合って、ギクリと肩が跳ねそうになる。


(平常心、平常心……なにを聞かれてもとぼけるのよ)
 

身構えたものの、国王はなにも言わずに顔をミシェルから動かし、お茶を口にした。


クロードの食事が終わり、執務室へ向かうと、アベルとミシェルの朝食になる。


「フランツ、昨日は楽しかったかい? 町へ行ったんだろう?」

「はい。久しぶりで楽しかったです」
 

ミシェルは食事をとりながら笑顔になる。


「それはよかった。今日は元気がいい」

「はい! お休みをありがとうございました」

「さあ、早く食べて陛下のお部屋を掃除しよう」
 

アベルはミシェルに食べるよう促した。


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