男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「も、申し訳ありませんっ!」


慌てて腰を屈めて拾おうとすると、先にクロードに取られる。

ミシェルはそのまま頭が上げられなかった。


「アベルから聞いていないのか? 本や書類などは手に触れるなと」
 

黒い瞳がミシェルの空色の瞳を冷淡に見据える。


「本当に申し訳ありません。掃除をしようとしただけなんです」
 

アベルから触れてはならないものを聞いていなかったが、そこは否定出来ずに、ミシェルはただ謝るだけだ。


「もう二度と触れません!」
 

必死に謝罪するミシェルにクロードは閉じた日記帳をテーブルに置き、なにも言わず踵を返して寝室を出て行った。
 
呼吸を止めていたミシェルは大きく吐いた。


(びっくりした……あまり怒られなくてよかったけれど、あの凍りそうなくらいの冷たい瞳は震えがくるくらい怖かった……)


「昨日とは大違い……別人なのかと思ってしまう……けど……」
 
ミシェルは閉じられた日記帳に視線を落とす。


(私の名前が書かれていた……見たい……なにを陛下は書いたの……?)
 

手を伸ばして見たくなる。ミシェルはおそるおそる日記帳に触れたが、やはりそれは出来ない。
 
気にしないことにして、ベッドのリネン類を外し始めた。


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