男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
それから毎日、侍従見習いとしての気持ちを大切にミシェルは従事していた。

しかし、ミシェルは憧れに似た気持ちでクロードを見ている自分に気づき始めていた。
 
今日クロードはイヴォンヌと昼食の約束があり、前回と同じくミシェルは東屋でふたりの食事を見守っていた。
 
ふたりが笑って話しているのを見て、ミシェルは嫌な気持ちを覚えたのだ。前回の時はそんなことは思わなかった。
 
不意にイヴォンヌがクロードの斜め後ろにいるミシェルに視線を向ける。


「あなた、先日迷子になった方よね?」
 
突然話しかけられてミシェルは驚いたものの、表情には出さずに「はい。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と答えた。

「なんて美少年なんでしょう。クロードさま、そう思いませんこと?」

「軟弱なだけだ」
 

クロードの言葉にイヴォンヌは微笑む。


「軟弱な美少年ならばパスカルさまがお好みになりそうですわね」
 

イヴォンヌはクロードの母親違いの兄の名前を持ち出す。


「パスカルが?」

「ええ。パスカルさまは人でも物でも美しいものを特に好まれていると聞いていますわ。目利きが素晴らしいと社交界では有名ですもの」
 

クロードも義兄の性癖は知っていたが特に気にしていなかった。


< 75 / 272 >

この作品をシェア

pagetop