男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「うん。やっぱり来ちゃった。花山車を見たくて」

「そうかい。そうかい。山車は正午からだよ。着替えたら食事をして行きな。荷物はこの前の部屋にあるからね」
 

マーサは目尻を下げて、ミシェルを二階へ上がるように促す。


「はいっ」
 
ミシェルはにっこり笑顔をマーサに向けて端にある階段へ向かった。
 
二階の一番奥の部屋へ入ったミシェルはクローゼットの中の手作りの袋を手にする。

袋の中からドレスと茶色の髪のかつらを出してから、深いため息が綺麗なピンク色の唇から漏れる。


「服がこの前と一緒……でも仕方ないわ。お城へはこれしか持ってこなかったもの」
 

ミシェルは着ていたフランツの上着を脱いで着替え始めた。
 
胸の膨らみに巻いたリボンを外すと、呼吸が楽になる感覚だ。ドレスの下に身につける下着もつけるが、きつくリボンを巻くよりも締めつけない。

茶色のかつらもつけて、ようやく女の子に戻れた。


(クロードさまが待っていると悪いから、断りに行くのよ。用事があるからと言ってすぐに離れればいい。そうすれば正体がバレる危険を避けられる)
 

ミシェルは自分にそう言い聞かせて、階下に下りた。

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