溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「そうだ、おばあちゃんが入院中に田中さんから羊羹をもらったんだ。食べない?」

「そうだったの。後でお礼を言わないとね」

再び台所へ向かい、羊羹を切ってお皿に乗せて居間に戻ると、なぜかおばあちゃんは神妙な面持ちで私を待っていた。

「どうしたの? おばあちゃん」

それぞれの前にお皿を並べて腰を下ろし、早速食べようと爪楊枝を手にする。

おばあちゃんは私の様子を窺いながら言った。

「あのね、一応知らせておこうと思って、入院中に隆一さんに連絡をしたの」

「……えっ」

手は止まり、爪楊枝を持ったままゆっくりと視線を上げた。

おばあちゃんの言う『隆一さん』は私のお父さんだ。今は再婚相手とその連れ子の妹、彩音と三人で暮らしている。

大学二年の時に別々に暮らして以来、一度も会っていない。

おばあちゃんは私とお父さんたちが疎遠になっていることを心配しているけれど、そんなの気にしないでほしい。

だって一度も向こうから『こっち来ないか?』って言われていないのだから。

年末年始だって私から行かないと連絡をするだけ。卒業式の日だって、『行くよ』って言ってくれなかった。
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