溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
今日、本当は午前中の打ち合わせを終えて半休をもらうつもりでいた。無理そうだったら、中抜けして受診後、おばあちゃんを送り届けてまた仕事に戻るつもりでいた。それなのに……。

情けない自分に嫌気が刺す。

スマホをバッグにしまい、トボトボと重い足取りで飲食店へと向かっていく。

今日、忘れていなければ久しぶりに佐々木君に会えていたんだよね。

お互い仕事が忙しくて、ほとんど連絡を取っていなかったから会いたかったな……。

「あっ……」

次の瞬間、今さらながら重要なことに気づいた。

彩音に付き添いをお願いしたってことは、佐々木君と会うことになるんだ。そう思うとモヤモヤする。

彩音は誰が見ても可愛くて、性格もいい。私が男の人だったら、間違いなく好きになっていたと思う。

どうしよう。……彩音と会って話をして、佐々木君も好きになったりしたら。

子供じみた不安に襲われながらも、打ち合わせの時間が迫っていることに気づいた。

「だめだ、今は仕事中なんだから」

そう自分に言い聞かせて足早に向かう。必死に頭の中から追い出しても、ふとした瞬間に思い出しては、モヤモヤは膨れ上がるばかりだった。
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