溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
靴を脱いで家に上がると、彩音は嬉しそうに首を横に振った。

「全然だよ。むしろお姉ちゃんの役に立てて嬉しい」

どこまでも純粋で可愛い彩音に、醜い感情を抱いた自分が嫌になる。

本当、私ってば心狭すぎる。彩音は私の代わりにおばあちゃんの病院に付き添ってくれたっていうのに。

「本当にありがとう。……今度なにかお礼するね」

そう言って廊下を進むと、すかさず彩音がついてきた。

「本当に!? やったー! 楽しみ~」

子供のように両手を上げて喜ぶ彩音に、クスリと笑みが零れ落ちる。

「あっ、ねぇねぇ! お姉ちゃんって佐々木先生と同級生なんでしょ?」

けれど次に彼女の口から出た彼の名前に身体は強張り、足が止まった。そのまま視線を彩音に向けた。

すると彼女はうっとり顔で話す。

「佐々木先生、すっごいカッコいいね! しかも優しくて私にもわかるように丁寧に説明してくれて! 笑顔も素敵だったなぁ」

「……っ」

彩音が思ったことは誰もが抱く感情だと思う。私だってそう思うもの。でもなぜこんなにも面白くないんだろう。苛々しちゃうんだろう。
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