溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「ねぇお姉ちゃん、今度佐々木先生と会わせてくれない? お礼はそれがいい! 三人でどこか出かけよう!?」

三人でって……。そんなの無理。

なのに彩音は楽しそうに話を続ける。

「どこがいいかなー。あ、そういえばこの間、ネットで美味しそうなパンケーキ屋を見つけたの! そこにいかない? それとも甘い物じゃない方がいいかな?」

「えっと……」

聞かれても返答に困る。それに私、このままじゃ彩音に酷いことを言っちゃいそうで怖い。

「ごめん、彩音。ひとつ仕事で忘れていたことがあって。戻らないと」

「えっ? 今から?」

踵を返し、玄関へと急ぐ。するとすぐ彩音も後を追ってきた。

「帰ってきたばかりなのに?」

「うん、急いで戻らないと……。おばあちゃんにごめんって言っておいて」

抜いた靴を履き、玄関のドアに手を掛けた。

「今日は遅くなるかもしれないから、先に寝ていていいから」

彩音を見ることなく一方的に言い、家を後にした。歩道を進み最寄り駅へと駆けていく。

なにやっているんだろう、私。佐々木君には返事を曖昧にしたままなのに、勝手にみっともなく嫉妬して、彩音にあたったりして。
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