溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
きっと彩音、気にしているよね。帰ってきたのにまた仕事に戻るなんて、明らかに不自然だったもの。

それでもあれ以上家にいられなかった。彩音の口から、佐々木君の話を聞きたくなかった。

大きく呼吸を乱しながら無我夢中で走り、気づけば佐々木総合病院に来ていた。

病院の前で足を止め、肩を上下させながら呼吸を整える。

私……なにをずっとグルグル考えていたんだろう。何年経っても佐々木君を思い出していたのも、薫ちゃんを佐々木君に会わせたくないと思ったのも、彩音に嫉妬したのも、全部佐々木君が好きだからじゃない。

身勝手な想いを抱くのは、好きだからだ。

答えはこんなにも簡単だったのに、なにを迷って答えを出せずにいたんだろう。

呼吸も落ち着き、大きく深呼吸をした。

恋愛とはご無沙汰すぎて、なにもかも見失っていたのかも。一度気持ちを認めれば、怖いくらい好きって気持ちが溢れてくるのに。

「今はまだ、仕事中……だよね?」

夜の静かな病院前で呟き、バッグの中からスマホを取り出す。
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