溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「なに言ってるの、俺が出したいだけだから気にしないで。それより、はい。佐野、映画館でポップコーンは絶対食べるんだろ?」

「えっ、どうしてそれを?」

受け取りながらも、困惑してしまう。佐々木君にそんな話はしたことがなかったから。

「高校の時、よく友達と話していただろ? ……この映画を製作した会社の作品が好きだってことも、その時聞いたんだ」

「そうだったんだ……」

そういえばよく私、教室で友達に映画の話をしていた気がする。それを佐々木君は覚えてくれていたんだ。

「佐野が好きだと知って、俺も見るようになってさ。そしたらまんまとハマっちゃったってわけ。だから今回の新作も楽しみにしていたんだ」

少しだけ照れた様子で話す彼に、また好きって気持ちが積み重なっていく。

「あ、はじまるね」

「う、うん」

映画館内の照明は落とされ、予告編が始まった。会話は終わり、私と彼はスクリーンへ視線を向ける。

でもいまだに私の胸の鼓動は早鐘を打ったまま。

些細なことで、佐々木君に本当に十年間想われていたんだと実感していく。十年分の想いをこれから先、返していきたい。

映画を見ながら何度も思った。
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