半身。然るに片羽。

手が震えているのがみえた。
そっと静流の手を握った。

バババッ‼︎
と灰色の景色に変わった…

『・・・ゴ・メンナサ・イ・ゴメンナサ・イ・・・シズル・・・』

俺にも静流の背後にいる者が視え、静流は声が聴こえているようだった。
静流はゆっくりと振り向きなにかを言いたそうにしていた。
何度目かの許しを請う声に、静流はやっと返事を返す事ができた。

「謝らなくて良いよ、私は大丈夫だから…ね?」

そして、おばさんが消えた。

気が付かなかったけど、色々な者が視えていた。
こんなに視えているか…

静流の世界は、狭間のようだ。



手を離すと、景色も元に戻った。
もう一度握ってみるがもう俺には視えなかった。

「一葉、ありがとう」

静流はそっと泣いていた。

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