冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「もう!帰ったらヴァローナもエリオットも、引っぱたいてやるんだから!」
そう叫びながら素足で地面を蹴り上げると、ほどなくして襲ってくる浮遊感と重力に勢いよく引かれる感覚。
「うっ……」
永遠のようにも感じられたその感覚が終わった頃に、ヴァローナの呻き声が聞こえた。
思っていたより衝撃が軽かったわね、とゆっくり目を開ける。
「……ご、ごめんなさいヴァローナ」
「……いえ」
下を見ると、私の下敷きになったヴァローナは地面に寝転がひ、遠い目をして夜空を見上げていた。
「……重かった?」
「……………………いえ」
私の恐る恐るといった問いかけに、先ほどよりたっぷり間を開けて、ヴァローナは静かに答えた。
「……そう……」
主人と従者揃って、後ろめたいことがある時は人と目を合わせないようにする癖があるらしい。
私はヴァローナに負担をかけないようにゆっくりと彼の上から退いて、自分が飛び降りた書斎を見上げる。
ようやく追い付いてきたらしい兵士達がが滝を流れる魚のように降りてくるのを見て、私は身を固くした。