冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「こちらです!」


正面扉の兵士の多さを見て、ヴァローナは私を連れたまま突破するのは不可能だと判断したのか、勢いよく起き上がるのと同時に私の身体を抱き上げて走り出した。


「舌を噛まないようにしてください」


なんてヴァローナはさらりと言いながら、馬車よりも速く駆けていく。

私は目を回しながらも、舌を噛まないようにぐっと口を閉ざした。

ヴァローナの誘導に従って茂みのそばを息を潜めて、しゃがみながら移動する。


暗がりでは私達の姿を視認するのが難しかしちらしく、ここから少し離れた、白の正面の入口から続々とやってくる兵士や従者達は私達を通り過ぎていった。


「市街地に繋がる地下通路を見つけました」

「地下通路……って、まさか」


こちらです、と案内された大きな穴を見下ろして、私は愕然と口を開いた。

空いた穴を囲むようにして石を積み上げ、接着剤で固められた井戸。

長い間使われていないのか、そのすぐ横に設置された水を汲み上げるポンプは錆び付いている。


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