冷徹王子と成り代わり花嫁契約
「ヴァローナ!大丈夫なの?」
「問題ありません。ここを片付けたらすぐに追い付きますので、道なりに進んでください!」
ヴァローナの肩越しに見えた数えきれないほどの敵兵に、その場に留まろうかと一瞬考えた。
(いいえ……この間のように足手まといになってしまう)
迷いを振り切るようにロープを強く握って、積み上げられた石と石の間に足をかけながら、ゆっくりと下っていく。
エリオット王子から男性物の服を借りていて良かったと心底思う。
女物の服でこんなことをしたら、スカートが足に絡まってしまっていたかもしれない。
上から覗き込んでいた時はそれほど深い井戸とは感じなかったが、実際に下りてみるとなると結構な高さがあるようだ。
ロープを握り締める手のひらが、摩擦で痛む。