冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「……え?」


驚きの声を上げたのは、私だったか、クリストフ王子だったか。

クリストフ王子の驚きに見開かれた目。
その視線の先を辿れば、薄暗い中でも視認出来る、赤く染まった肩。

むせ返りそうな硝煙の臭いと、耳に残る銃声と微かな耳鳴り。

それを辿って振り返れば、険しい顔で手持ちの銃をクリストフ王子に向かって構える、エリオット王子が立っていた。


「大丈夫か、イリヤ」

「え、ええ……私は平気よ。《血印の書》も、ここにあるわ」


クリストフ王子は視線だけを私に向けて、怪我一つないことを確認すると、少しだけ表情を和らげた気がした。

呻き声を上げて、地面に落としたサーベルを拾い上げようとするクリストフ王子に向かって、エリオット王子は再び銃口を定め、引き金に手を掛けた。


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