恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
醜い娘ではない、むしろ可愛らしいのだが──この娘を娶ったら、幼女趣味だと思われる。
そう世間で言われていることまでは、鳴鈴は知らない。ただ、自分に色気がないことは自覚していたし、それが理由で縁談が来ないのかも、と考えなくはなかった。
「この前行ってくれたお使いで、翠蝶徳妃さまがあなたをいたくお気に召してくださってね。いい縁談を授けてくださったのよ」
母の説明を聞いているうちに、めまいが鳴鈴を襲った。たしかに翠蝶徳妃とは話があい、とても楽しい時間を過ごした。でも、でも。
(余計な気を使わないでよ、翠蝶徳妃さま──!)
一度も縁談が来たことのない鳴鈴を哀れに思ったのかもしれないが、余計なお世話というものだ。調子に乗って笛なんか吹くんじゃなかった。
鳴鈴の心は危ないところを救ってくれたあの美男に奪われっぱなしであり、他の男に嫁ぐなど、とても考えられない。
「お、お断りいたします」
小さな反論に、両親の動きがぴたりと止まった。
今まで反抗などしたことがない一人娘の口から出たセリフを信じられないという顔で。
「私、お慕いしている方がいるので……その方以外には嫁げません」
「なんだと。それは誰だ」
眉を吊り上げた父に、鳴鈴は素直に事情を話した。