恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
皇子の旅のお供にしては少ない気がするが、飛龍に言わせると、多すぎても皇太子の周囲に嫌味を言われるし、少なすぎてもなめられるので、その微妙な線を考えた数らしい。
「あ、やはり五十個だ。俺の妃は甘いものが好きみたいだから」
はふはふと餅を頬張る鳴鈴を見て、飛龍は追加注文した。なぜか倍以上の数を。
「殿下、いくら鳴鈴さまが甘い物が好きでも、それほど沢山は食べられませんよ」
緑礼が言うと、飛龍は「そうか」とうなずき、二十個分の代金を渡す。オヤジはほっとした顔をした。
「すぐに焼きますので、お待ちください!」
二十個ならなんとかなると思ったのか、オヤジは目の前の網の上に新たな餅を並べて焼き始めた。
「少し休憩だな。辺りを偵察してくる。浮かれた狼藉物がいないとも限らない」
「では、お妃さまと私はここで……」
「いや、鳴鈴は一緒に連れていく。お前はここで待て」
餅を平らげて水をもらい、ぷはーと息をついた鳴鈴の手を、飛龍は握った。
「ははあ。夫婦水入らずで都見物に行きたいなら、そうおっしゃればよろしいのに」
緑礼はにっと口の端を上げた。