恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「生地に胡麻を練り込んで、甘い餡を包んだ餅です。あの、こう言っちゃなんですがどこの家でも作れるようなもので……貴族様のお口に合うかどうか……」
あわあわと余計なことを言ってしまうオヤジに、飛龍は小銭を渡した。
「ふたつくれ」
「あ、はいっ」
オヤジは焼きたての餅を竹の葉に包み、飛龍に渡した。しかし彼は自分でそれを口にしようとはせず、さっと鳴鈴に渡す。
「味見しろ。ひとつは緑礼に」
「私まで、いいんですか?」
予想外だったのか、緑礼が目を丸くする。
「鳴鈴は何でも美味そうに食うからな。お前がちゃんと味を確かめてくれ」
「えー、殿下、私を馬鹿にしています?」
飛龍を睨みながら、鳴鈴は餅を齧った。温まった柔らかな餅と餡が口の中をほんわりと優しい甘みで満たす。
「ん~ふっ」
幸せそうに頬を緩める鳴鈴の横で、緑礼が同じものを食べて言った。
「たしかに素朴ですが、結構美味しいです。餡の量も甘さも重くなく、ちょうどいい」
「そうか」
飛龍はうなずくと、オヤジに向き直った。
「二十個。用意できるか」
「へえ?」
「ここにいる全員分だ」
飛龍が指さした先には、星稜王府から共に来た護衛の武将や兵士、鳴鈴の身の周りの世話をする侍女たちなどなど……がいた。