恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
反論しながら、鳴鈴は「桃の花に毒なんて聞いたことないもの、大丈夫よ」と自信なさそうにぶつぶつ言っている。結局枝は鑑賞用になりそうだ。
くるくると表情を変える鳴鈴を見ていると、いつしか頬が緩む自分に、飛龍は気づいていた。
最初は迷惑な、形だけの妃だった。けれど最近は、そうではなくなっている。彼女の無邪気な顔を見ていると、心が安らぐのを感じる。
戦の間も、何度も風の音が鳴鈴の笛の音に聞こえた。鳴鈴が王府で待っていると思うと、絶対に帰らなければと、いつもより強く思った。
鳴鈴が悲しそうな顔をしていれば、自分の胸がきりきりと痛む。なんとかしてやりたいと思っていると、鳴鈴はいつの間にか勝手に浮上して、先に笑顔を見せてくる。
「冗談だ」
真剣に桃を小鳥に与えていいか悩んでいる鳴鈴がおかしくて、笑えてきた。くすくすと笑うと、鳴鈴はぷーっと頬を膨らませた。
「もう」
それだけ言って飛龍の肩を叩くと、鳴鈴も笑いだした。
笑いは伝染する。鳴鈴が嫁いできてから、飛龍の笑う回数は格段に増えている。