恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
(可愛いやつ)
今日は頭の後ろから二本の兎の耳のようなものがついた朝天髻(チョウテンケイ)に結っている黒く艶やかな髪の毛に、桃の花びらが付いている。
とってやろうと手を伸ばすと、鳴鈴がぴくりと揺れた。
「なにかついています?」
眉をひそめて飛龍を見上げる顔は、珍しく何かを警戒しているように見えた。警戒というより、怯えと言った方が正しいのか。
「花が髪に」
言い終わらないうちに、鳴鈴は触れられるのを拒否するように後ろに下がった。
そんなことは初めてだったので、飛龍としては違和感を覚えずにはいられない。
「どうした」
いつも、少し触れるだけで頬を染めて嬉しそうにしていた鳴鈴が、飛龍を拒否するように遠ざかっていく。
「別に……」
鳴鈴の顔がみるみるうちに曇っていく。大きな目に涙が溜まっていくのを見つけ、飛龍はハッとした。
小鳥の話をしていた鳴鈴はどこにいってしまったのか。笑っていた彼女は、無理をしていたのか。
微妙な距離を保ったまま見つめると、鳴鈴の目からぽろりと雫が零れ落ちた。
「どうして泣く?」
飛龍は単刀直入に聞いた。少し考えても、彼女が泣く理由が思い浮かばなかったから。
袖で涙を拭きながら、鳴鈴は肩を震わせた。