恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
「だっていつまでも……殿下が、私を女として見てくださらないから」
そう絞り出すと、鳴鈴の目からぼたぼたと涙が地面に落ちてシミを作った。
今まで本人も気づかないうちに我慢し、押し込めていた気持ちが何かの原因で決壊し、溢れだしたのだろう。
「私は初めてお会いしたときから、殿下をお慕いしておりました。あなたに嫁ぐことができるなんて夢のようで、とても嬉しかった」
ぽた、と飛龍の足元に新たな丸いシミができた。鳴鈴の涙に誘発されたように、さっきまで晴れていた空が曇り、急な雨粒が落ちてくる。
「でも、殿下はそうではなかった。私は迷惑なだけの妃で、最初から今までずっとそうで……なのに優しくしてくださるから、いつかは、心から通じ合えると……本当の夫婦に慣れる日が来ると……勘違い、して、しまって……」
切れ切れになる鳴鈴の言葉に胸が締め付けられる。
皇城での事件から、自分が鳴鈴を傷つけてしまっていることは承知していたつもりだ。
しかしその悲しみを面と向かってぶつけられ、自分が思っていたよりずっと鳴鈴は傷ついているのだと、飛龍は改めて感じた。