恋華宮廷記〜堅物皇子は幼妻を寵愛する〜
自分が翠蝶徳妃のもたらした縁談を拒めば、父が皇宮で冷遇されるようになる。徐家が繁栄していくか、衰退していくかが自分の命運にかかっている。
そう言われたら、今までのように勢いよく「嫌だ」とは言えなくなってしまった。
「……ちょうど七日後、皇宮で重陽節の宴がある。翠蝶徳妃さまはそこでお相手とそなたを合わせてくださる。婚儀は三か月後の予定だ」
「そのお相手とはどなたなのでしょう」
諦め半分で鳴鈴は尋ねた。
「驚くなかれ、なんと第二皇子星稜王(セイリョウオウ)こと、向飛龍(コウ・ヒリュウ)さまだ」
皇子は皇帝に領地を与えられ、その地を納める王と呼ばれる。第二皇子は星稜という土地の王だから星稜王。
「本当なら皇太子殿下が良かったけれど、贅沢は言えないわよね」
ほほほと笑う母。反対に鳴鈴はちっとも面白くない。あの美男でなければ、皇太子でも皇子でも一緒だ。
笛しか特技のない自分が後宮でうまく立ち回れるとも思わないし、皇子の方でよかったと思うしかない。
(星稜王、向飛龍さま……たしかとっても強い武将で、いいお年なのに独身なのよね。無愛想な堅物……だっけ?)
貴族の娘が集まる場所で噂を聞いたことがあるくらいで、姿絵さえ興味がなかったので見たことはない。